ポリッシャはこうして出来上がる

(Mai編)

1.バルク品本体の到着

リョービ(株)様から、送られてきたMaiのバルク品をリョービ販売(株)様が、運んでくれて、到着いたします。一応組み立てられ、完成された商品ですが、大きな箱にまとめて入れてあります。 そのままで販売できません。

これで100台程です。

蓋をあけるとコードを上に収まっています。

2.届いたバルク品を検査します。

外観の傷、塗装の剥がれ、割れ・しわなどが無いかを確認します。回転させ、普通に動くか否か、正回転・逆回転の音は正常か否かを簡単に調べます。

分解し、配線の噛みやねじの緩みなどが無いかを確認します。

ネジを緩めて分解します。

配線噛みの確認とねじの増し締め。

被加工パーツをすべて分解します。

3.被補強パーツを補強パーツに交換して組み込みます。

MaiⅡでは主として、耐久性向上とトルクフルな回転のために、①ギヤの耐久性向上の加工、②高品位グリスの使用と循環、③高速型ベアリングの使用、④軸受けの変更 ⑤カーボンブラシのオイル含浸などを行っています。

耐久実験は弊社、リョービ㈱様にて行いますが、現場のカスタマー様に、危険の無い範囲でお願いすることもあります。

弊社では、実際にバフを装着し、盤面を研磨する状態に近い実験機を作って、ある程度の負荷で、数百時間~、運転と休憩とを繰り返す実験を行います。

リョービ(株)様の方法は、様々な仕組みを利用して回転に対する非常に大きな抵抗を掛け、稼働と休憩とを繰り返して、数十時間ほどで、ギヤが摩耗してしまうほどの過酷な実験です。現場のカスタマー様にお願いする場合は、弊社にて管理している修理履歴から、「ギヤなどの係合摺動部分を良く壊す人」にお願いします。Maiは現在で12,000台程、出荷されていて、弊社に修理に返って来る割合は、ほぼ100%に近い確率です。「良く壊す人」のリストは、修理診断書の記録1 を更に高度に分類したもので、30件ほどあって、その人達の中から選ばれます(記録していて恐縮ですが)。

1 本、WEBサイト、修理に出すを参照してください。

1)分解したアマチュアと中間ギヤは耐久性向上加工を行います。

(株)不二機販様に持っていきます。(株)不二機販様はWPC加工と命名されたショットピーニング加工を開発し、国際的な特許を保有する会社です。その処理は、金属成品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮された気体に混合して高速衝突させ金属表面を改質する技術です2。特徴として、疲労強度、耐衝撃性、摺動性、表面硬度のそれぞれを向上させる効果があるものです。(株)不二機販様の協力の下、どのギヤにどの程度の硬さを与えたらもっとも全体の耐久性が向上し、使用感が良くなるかを実験しました。アマチュアの先端のヘリカルギヤ7歯。係合する中間ギヤ大48歯。中間ギヤ小19歯。これに係合するファイナルギヤ44歯の内、アマチュアのヘリカルギヤは中間ギヤの大歯に比較し7倍も摩擦する分けですので、これに加工し、強度を上げ、それに係合する中間ギヤの大歯は加工せず、中間ギヤ小歯はファイナルギヤより約2.3倍摩擦するので、これに加工を施しました。アマチュアのヘリカルギヤ>中間ギヤの硬さで加工することが良いと分かりました。

2 不二機販様 カタログ参照。

中間ギヤの選別

音の出るものの修正

加工された中間ギヤは見た目も美しくなります。

2)グリスを循環させる工夫をします。

いくらギヤに耐久性を向上させる加工を施しても、潤滑は不可欠です。

グリスとオイルとの違いは、グリスに入っている増稠剤(粘度を上げるスポンジの様なもの)がオイルには無いというだけの様です。すると、グリスもオイルも性能は全く変わらないということになります。グリスの方が粘度が高いので、衝撃に対する緩和性能が高いのかと思い粘度の高いものを選んで使用しましたが全くの誤解でした。有名な数件のグリスメーカーに協力してもらって実験し、試行錯誤を繰り返しましたが、どれも文言通りの結果にはなりませんでした。Maiのアマチュアは最高速で回転させると、30,000回転/分を超えるので、グリスの皮膜が停留出来ないのでしょう。そこで、グリスの欠点は一旦潤滑部位から離れるともう一度その場所に戻らないことと考え、何とか再付着(循環)するにはどの様にすれば良いかを考えました。電動工具を、自動車のエンジンの様にオイルで潤滑するのは、無理なので、どの程度の粘度であれば、ギヤケースから滲み出さないで、ポリッシャを休ませた時に、歯に再度戻ってくるかを、何度も実験し、工夫しました。

グリスが漏れない絶妙なクリアランスでカラーを嵌めます。モーターが左回転もするので、その場合インナーケースからモーターケース内にグリスを排出しようとするため、漏れないようにすることに大変苦労しました。

高速型ベアリングに交換する際グリスが漏れないように、スペーサーを挿入します。

更に、ギヤケースとインナーケースとの間からグリスが漏れることを防ぐためにシーリングをします。

3)偏荷重と摩耗に強い軸受けを開発しました。

MaiⅡでは、過酷な使用が期待されるため、I型の含油焼結メタルに代わって、セラミックスを分散させた高剛性砲金軸受けを開発し、使用しています。

組立の順番としては、「インナーケースにアマチュアを嵌入し、アマチュアとインナーケースとをモーターケースに嵌入、ギヤケースに、交換されたWPC加工済み中間ギヤを嵌入し、グリスアップ。インナーケースにシーラーをしたギヤケースを嵌合し、ねじを締めるという工程になります。

インナーケースに、嵌めます。

嵌められた特殊軸受け

4)オイルを含浸させたカーボンブラシを挿入します。

アマチュアのコンミテーターはⅠ型のものより若干耐摩耗性が上がっていますが、更に、減りにくくするために、カーボンブラシにオイルを含浸させました。

通電性の良い、モリブデンオイルが、約0.2g入っています。 ギヤケース回転時、焼ける臭いの原因は、このオイルの所為ですから、問題はありません。詳しくは、「故障かなと思ったら」を参照してください。

モリブデンオイルの含浸。

カーボンブラシの挿入。

4.回転数を回転計で測定し、調整します。

回転計による回転数の計測作業

更に回転の確認を不可有る・無しで行います。

5.ラバーカバーを貼って箱に入れ、完成です。

取説、パッド、グリップ、スパナ、DVD(使用方法の注意点)が入って完成です。

パッドは、事前に加速度計でバランスを確認したものを同梱します。

修理の流れと重複するところも多いので、そちらもご覧ください。